インターシティガーデンから「森のおすそ分け」・剪定枝の配布イベント

インターシティガーデン剪定枝の配布

赤坂インターシティAIRのくつろぎの場所としてお馴染みのインターシティガーデン。周囲の高層ビル群と対照的な蒼々とした緑が溢れるオープンスペースです。一歩足を踏み入れると、鳥のさえずりが聞こえ、木々と水辺がゆるやかに変化する趣きのある景色が広がっています。現在、インターシティガーデンで剪定した枝を配布するイベントを毎月第2水曜日に開催しています。赤坂インターシティAIRのランドスケープの設計を手掛け、竣工当時から緑地管理の監修をつとめる株式会社日本設計の山崎暢久さんにお話をお聞きしました。

Text: Mika Iwasaka


――インターシティガーデンのランドスケープの特徴についてお教えください。

山崎暢久さん(以下、山崎) 設計者として、ランドスケープの原点を振り返るきっかけになりました。形やデザインと言うよりも、純粋に森に緑があって気持ちよく過ごせる場所を作るということが求められました。自然が溢れる野山にトレッキングに行くと、緑があって気持ちよく感じますよね。公園の緑との違いは、野山では木々が自由に生き生きしているという点だと思います。

一般的な造園工事の樹木は、圃場で扱いやすく整えられた形で育てられます。通常の工事のやり方ですと、このような樹木を持ってきて、設計した平面図の通りに機械的に配置していきます。インターシティガーデンでは樹種本来の個性的な木を選び、自然樹形を活かせるよう現場で1本1本配置を考えながら植えていきました。

自然の木々というのはそれぞれが自由に枝を伸ばしながらも、隣の木と重なり、そして譲り合って、ゆっくりと時間をかけて調和した緑の塊を作っていきます。インターシティガーデンでは、このプロセスを手助けするような管理を行うことで、設計者の想定を超えた景色が生まれることを期待しています。設計者の目で管理の場に立ち会い、生長と変化にあわせて全体のバランスを整えていくような剪定を行っています。

インターシティガーデンで剪定する枝を指示する山崎さん
インターシティガーデンで剪定する枝を指示する山崎さん

――竣工時より、5年ほど経過した現在の方が目指す形に近づいている、ということでしょうか。

山崎 徐々に近づいていると感じます。例えば、ツツジは密に刈り込まれた低木植込みとして見かけることが多いと思いますが、自然界では高さ2〜3mくらいの木になります。ここでは、自然に任せて生長したままに枝を残すようにしているため、野山にあるようなやわらかい樹形になりつつあります。また、枯れ枝があったとしても、状況に応じて景色として敢えて残しているものもあります。

――まさに、里山から少し入った野山の雰囲気のような趣きのあるガーデンですね。こうした取り組みに向かった経緯をお聞かせください。

山崎 開発当初の「緑を基点としたまちづくり」という緑への強い想いに応えるには、今までのやり方では対応できないだろうと思いました。そのコンセプトを実現するためには、設計においても管理においても新たなチャレンジが必要だったのです。通常、設計者は工事の現場に常時立会うことはないのですが、赤坂インターシティAIRの工事では私がずっと立ち会い、木々の1本1本の向きや傾きを指示しました。施工する方にとっては予想外のことだったと思います。そうやって施工を見守る一日を過ごし、仕事帰りには公園に寄って緑を見比べたりして、これまでとは違うものができ上がりつつあることを確認しては覚悟を新たにする日々でした。

工事期間中は施工者との調整会議が開かれます。赤坂インターシティAIRでは、地下駐車場におかれた現場事務所で行うのですが、私がずっと植栽の現場に立会っているので、屋外で簡単な打ち合わせをすることもありました。植えたばかりの木々の間で図面を広げていたある時、若い担当者が「この場所(工事現場)で打ち合わせをすると、なぜか心が落ち着くんですよね」と言ってくれたことがあり、それが励みになったことは言うまでもありません。

――取材中も鳥のさえずりが聞こえますね。

山崎 竣工以来毎年鳥が増えています。キジバト、ヒヨドリ、シジュウカラなど、卵を孵したつがいもいますし、巣立った雛鳥もいます。いろんな鳥たちがそれぞれの場所を見つけられる景色をつくる、というのは大事にしているアプローチの一つです。それは、人が感じる居心地よさのパターンに通じるものがあると感じるようになったからでもあります。

鳥にも巣を作る場所にこだわりがあるんです。適度に開けた空間を好んだり、囲われた場所人目につかない樹々の間でありながら、意外と通路のすぐそばにあったり。インターシティガーデンにはいろいろな場所にベンチがありますが、人それぞれのお気に入りのベンチがあると思います。緑道沿いの人の流れに向き合う場所を好んで座っている方もいます。私は個人的にバス停の手前のベンチがなぜか好きなんです(笑)。

配布に向けて集められたさまざまな剪定枝。この日は、ツツジ、コデマリ、常緑ガマズミなどお花がついた枝も豊富に揃っていました。

――剪定枝の配布イベントを毎月開催されています。どのような経緯で始まったのでしょうか。

山崎 竣工当初から月に数回行う剪定作業に立ち会っていますが、「この枝を分けてもらえませんか」というお声がけをいただくことが度々ありました。「木々が気持ちよく、癒されています」という声をビルの利用者、関係者を含めて多くの方と共有したい、という気持ちがあり、剪定枝の配布を提案させていただきました。

正直「本当に持って行ってくれるだろうか」と恐る恐る始めましたが…(笑)。始めてみると期待以上に良い反響をいただきました。曲がった枝や枯れた枝が混ざっていることもありますが、それも自然の趣や季節感として楽しんで持って帰ってくださいます。

――今日の剪定枝の配布する様子を見て、多くの方が受け取りに来ていて驚きました。

山崎 少し前に赤坂インターシティAIRのインスタグラムで紹介していただいてから、いらっしゃる方がかなり増えました。2021年の秋から始めて、2022年の初頭から毎月の定例になりました。リピーターの方は多いようです。今は春先なのでお花がついている枝が多いです。特に今年は一度に多くの樹種の花が咲いています。

自分としては剪定枝を配っているというよりも、「森のおすそ分け」をしているというイメージなんです。インターシティガーデンの一部をみんなが電車で運んでいると考えると面白いと思いませんか?小さな森が街の中やご家庭に散らばっていく感じです。中には挿木で増やしている方もいらっしゃるみたいです。女性も男性も、ビル内の保育園に通う小さなお子さんも、幅広い年齢の方が枝を持ち帰られていますね。

このイベントでは、弊社のランドスケープ設計部門の若いスタッフに剪定枝の配布を手伝ってもらっています。この作業を通して、造園の設計の喜びや充足感を得て、それをまた設計に活かしてもらえたらいいなと思っています。若いスタッフにもお話を聞いてみてください。

Interview with

山崎 暢久(やまざき のぶひさ)
株式会社日本設計
ランドスケープ・都市基礎設計部
ランドスケープ設計第2グループ長

山崎暢久さん(写真中央)、大友寛悟さん(右から2番目)、谷本実有さん(左から2番目)

剪定枝の配布をお手伝いする、山崎さんと同部の若いスタッフのお二人にも皆さんの反響についてお聞きしました

大友寛悟さん 2022年の秋頃から定期的に手伝い始めて半年くらいが経ちました。最近はお客さんの数が増え、100人以上いらっしゃる日もあります。毎月楽しみにしてくださる方がいて「先月いただいた枝に花が咲きましたよ」と写真を見せてくださったりすると、こちらもうれしいですね。ここで配っている枝はお花屋さんで売っているものとは違いますし、無料ですので、違いを含め楽しんでいただけたらと思います。

谷本実有さん 2022年の7月からこのプロジェクトに参加しています。レイアウトや配布の仕方をチームで試行錯誤して、数か月前から剪定枝を貼るパネルの設置も始めました。「写真に撮って名前を覚えます!」と言ってくださる方もいて、やって良かったなと思います。樹名を確認してパネルを作りながら、私も一緒に勉強しています。

パネルにはその日に配布する剪定枝の樹名が手書きで添えられています。
パネルにはその日に配布する剪定枝の樹名が手書きで添えられています。

剪定枝の配布は毎月第2水曜日に開催しています。是非、自分の「小さな森」を持ち帰ってみてください。

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INFORMATION

インターシティガーデンの剪定枝のおすそ分け

インターシティガーデンの剪定枝のおすそ分け

毎月第2水曜日 11:30〜14:30(予定)
2Fオフィスラウンジ予定(ガーデン側)
参加無料 予約不要

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